御膳本草は、琉球王府の御医師である渡嘉敷親雲上通寛が、尚灝王の命を受け清朝時代の中国北京に学び、1833年に記したとされる食医学書です。
琉球で唯一の食物本草学の本で王の食卓に供する食材の薬効、食べ合わせを記しており、現在はハワイ大学に所蔵され貴重な書物として大切に保管されています。

「御膳本草」(ぎょぜんほんぞう)をひもとくと、沖縄の養生食が中国の食療養生思想の影響を大きく受けていることがよくわかります。 「中医学」を生み出した中国では、古来から「食」は医療として重視されてきました。中医学とは、数千年という長い歴史に裏付けられた、中医薬学の理論と臨床経験に基づく中国の伝統医学です。
中国宮廷では、「疾医」、「瘍医」、「獣医」、「食医」の4種類の医者がいたとされており、その中でも「食医」は王の健康を守る最高の医療として最も重要とされていました。

御膳本草は「食べ合わせ」について詳しく記されていることから、まさに「食はクスイムン(食べ物は薬)」の原点ともいうべき書物であり、琉球料理のルーツといえます。ここには、野菜や魚、海草、家畜類(鶏や豚肉、ヤギ)など食材の組み合わせや調理方法なども詳しく書かれています。
かつて「王の為の食養生」であった御膳本草は、時代とともに家族の健康を守る琉球の台所へと語り継がれ、島に暮らす人々の命と健康を支えてきたのではないでしょうか。

御膳本草に記された「琉球に伝わる食の知恵」は、これからの社会に拡く貢献できる「食養生」です。琉球薬膳を通して、自身や家族への健康、自然と共に生きる感覚に目を向け、人本来の持つ力を取り戻すきっかけになることを願っています。

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